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■記事

2008/09/30

京都環境コミュニティ活動(KESC)
水源の森づくりチーム 活動報告
~なぜ、今「水源の森づくり」を行うのか~

■ 生命の源である森林

 森林の機能には、水源涵養、災害防止、地球温暖化防止などいろいろありますが、一番重要なのは水を供給してくれるということでしょう。都市に住む私たちが水道の蛇口をひねったときに水が出るのは、周辺に残された森林のおかげです。森から沸き出す滋養豊かな水は、あらゆる生命の源であり、全産業を支えています。太陽光や風力など、石油に替わるエネルギー資源はありますが、未だに水に替わるものはありません。

土砂崩れを起こした放置人工林。京都府福知山市(2004年10月)

(土砂崩れを起こした放置人工林。京都府福知山市(2004年10月)


■ 危機に瀕する森林

 日本の森林率(森林が国土に占める割合)は67%で、世界第三位を誇ります。京都市における森林率も73.7%ですが、実は自然の森はあまり残っていません。これは、1950年代から60年代にかけて行われた国の拡大造林政策により、 自然の森が伐採され、木材を取るためのスギやヒノキの人工林に変えられたためです。その結果、日本の人工林の割合は全森林面積の42%(京都府内では37%)にのぼります。家の柱になるスギやヒノキは私たちの生活になくてはならないものですが、地域によ っては地形や標高を無視し、あまりにもたくさん植え過ぎてしまいました。しかも、そうして植えられたスギやヒノキは安価な輸入木材に押されて売れなくなり、手入れされずに放置されるようになりました。  このような手入れされていない「放置人工林」の増加により、様々な問題が起こるようになりました。放置人工林は、保水力・土壌を支える力が自然林に比べて劣るため、川の流量が減少し、また台風が来ると土砂崩れを起こし、大雨が降ると洪水を起こすようになってしまいました(複数の調査によると、放置・手入れ不足の人工林は雨水の土壌浸透能※が自然林の1/2.5、貯水能力は表層土壌で10%低下する)。また、スギやヒノキ一辺倒の人工林には野生動物のエサになる木の実がならず、放置人工林の中には光が入らないため下草も生えず、様々な生きものが生きていくことはできません。生息地を失った動物たちは、エサを求めて里地の畑や、残された自然林などに集中するようになりました。その結果、農林業被害を起こすようになり地元の方は大変困られ、動物たちは害獣として殺されるようになりました。
※浸透能:その士壌に水がしみ込む速さを相対的に数値で表したもの。この値が高い土壌は降った雨を速やかにしみ込ませる、つまり保水カが大きい。

放置人工林内。川の水が涸れてしまっている。

(放置人工林内。川の水が涸れてしまっている。)


■ 森には様々な生きものが必要

 動物は被害を起こすことがある反面、森林生態系を構成する重要な一員でもあります。豊かな森は、植物だけではなく、動物、バクテリア、細菌など多くの生きものがいて初めて成り立ちます。例えば、植物の中には、動物に食べられてフンとして排泄されなければ発芽しないものもあります。花粉 を媒介する昆虫も必要です。


■ 自然に近い森の復元と間伐促進で、環境保全を

 ある吉野の代々続く林業家の方は、「かつて山の上の自然の森からは栄養豊富な水が湧き出し、その水によって、山の下のほうにある人工林のスギも生長した。だから山のてっぺんや尾根沿いの自然林は触らず、手付かずで残した」と話しています。  水源涵養、災害防止、獣害軽減、人と動物との棲み分けのために、山の上方や尾根沿い、またスギ、ヒノキの生育に適さない場所は、なるべく元の自然に近い森に戻していくこと。一方、里地に近い人間が利用する人工林はしっかりと手入れを行い、材として活用していくことが必要です。

300年間人の手が入っていない若 杉天然林(岡山、鳥取、兵庫の県境)

(300年間人の手が入っていない若 杉天然林(岡山、鳥取、兵庫の県境)。 中は明るく、多種多様な植物が生え、こんこんと水が湧き出している。)


■ 参加事業者を募集中!!

 今後も継続して森林保全活動や学校での森の大切さを伝える環境学習を行っていく予定です。関心のある方は、お気軽にフォーラム事務所までご連絡ください。