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■記事

2008/06/05

★連載第3回★ 京の交通交流ひろば出張所
京都の市バス路線は「わかりにくい」か?
【その2】頻繁に乗る人に好まれるかたち

事務局コーディネーターの長谷川吉典です。連載「京の交通交流ひろば出張所」第3回をお届けします。「京の交通交流ひろば」は、“環境にやさしい交通体系の創出”を目指して活動している交通WGのウェブサイトで、環境を主な視点にしながら京都の交通に関する様々な情報を紹介しています。本連載では、その中から、広くフォーラム会員の皆様に興味深く見ていただけるようなトピックを毎月紹介していきたいと思います。

●わかりにくい? 不便? 京都の市バス路線

京都の市バスの系統数は70余りあって、よく「複雑でわかりにくく不便だ」と言われます。市バスの系統は碁盤の目の街路を単に縦横に走るだけでなく、何度も交差点で曲がる経路をたどるものがほとんどで、市バスの系統の全体像が頭に入っている人はなかなかいません。

ですが、今の市バスの系統は実際に利用する人にとって、本当に「わかりにくく不便」なのでしょうか? 今回は、通勤通学や日常の用事で頻繁に市バスを利用する人にとってどうかを取り上げます。

●市バス利用者の大部分はリピーター(常連客)
 興味深い京都市の市政総合アンケート調査結果

地球温暖化防止の面からも、歴史的都市の街路の交通渋滞を軽減する面からも、市民や日常の用事で京都を訪れる皆さんには、マイカーでなく公共交通機関(バス・電車)を利用していただきたいものです。

さて、京都市では毎年度、「市政総合アンケート調査」を実施していますが、2007年度第1回調査のテーマが「京都市内のバス路線の利用実態とお客様ニーズ」でした。この調査結果を見てみましょう。

無作為抽出した20歳以上の市民からの回答結果によると、マイカーや自転車等も含めた「よく利用する交通機関」の質問で、回答の1位が市バス(62.1%)でした。

「バスを利用する頻度」の質問では、「ほとんど利用しない」が30.4%ある一方で、「ほぼ毎日」が8.0%、「週に3~5回」が11.2%、「週に1~2回」が14.1%と、バス利用客の中心がリピーター(常連客)であることが読み取れます。

●現在バスを利用する主な理由は?
 「目的地まで乗り継ぎなしで行ける」が56.4%

設問の「現在バスを利用する主な理由」に関する回答は、興味深いものがあります。理由の1位は「目的地まで乗り継ぎなしで行ける」で、56.4%と半数以上の回答者が挙げています。2位は「バス停留所が自宅の近くにある」で45.3%、3位が「鉄道駅への接続がよい」で23.0%でした。

●頻繁に乗るからこそ、乗換を余計面倒に感じる

これら上位の回答からは、自宅の近くにバス停があり、目的地、あるいは鉄道の駅まで1回の乗車で行けるバス路線網が支持されていることがわかります。

すなわち、公共交通サービスの質の評価としては、人々は乗換に抵抗を感じるので、頻繁に利用するのであればなおさら、乗換が不要であったり、あるいは乗換の抵抗がなるべく小さいことを好ましく感じる、ということを調査結果は示しているといえます。

●目的地間直結型の現在の市バス路線網は利用者ニーズの反映

一見複雑な市バスの路線網ですが、多数の系統を運行して主要な目的地間を乗換なしで結ぶかたちが、頻繁に利用する人々のニーズを反映させたものであることがわかります。

その結果は数字にも表れています。現在の市バスの1日あたり平均の利用客数は約31万人ですが、近年は、敬老・福祉乗車証での利用が減少傾向を示す一方で、それ以外の「一般旅客」(全体利用者数の8割弱)が微増の傾向にあり、リピーターのつなぎとめに成功しています。経営指標でみても、経費節減の努力ともあいまって、市バス事業は2003年度から2006年度の4期連続で黒字決算になっています。

●路線図を手に市バスを使おう
 出発地と目的地に共通の系統番号を見つければOK

「京都市バス・地下鉄路線図」は、交通局の定期券発売所や案内所等で無料で配布されています。路線図で、出発地と目的地の両方にある系統番号を見つければ、それが乗換なしで行くことのできる市バス系統です。「最近はマイカーばかりで市バスに乗っていないなぁ」という方も、脱温暖化社会に向けた最初の一歩として、路線図を手に、市バスに乗ってみてください。


上賀茂神社操車場
(上賀茂神社操車場)