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■記事

2007/06/29


【新連載】小山直美のドイツ報告
第1回 ドイツで見た森林保護施策


私は日本熊森協会でボランティアをしています。

日本では1960年代以降の拡大造林政策により、山奥まで自然の森を伐採し、スギやヒノキ一辺倒の人工林にしてしまいました。人工林は全森林面積の4割を占め、場所によっては7割、8割にものぼります。そのために野生動物は山奥でエサがとれなくなり、人里に降りて来ては農作物被害を起こし、害獣として殺されていっています。また、根が浅いスギ、ヒノキは保水力や土壌を支える力が弱く、地元では川の水が減ったり、土砂崩れ等の自然災害を起こすようになっています。

全生物に清浄な酸素と水を供給し、海には魚の棲める漁場を育て、二酸化炭素の吸収源にもなる、豊かな森。このような森の形成には、野生動物が多大な貢献をしています。野生動物と、動物たちが造る豊かな森を残さなければ、私たち人間も生きていくことができません。当会では、次の世代に、ツキワノグマなどの大型野生動物が棲めるような最高に豊かな森を残すことを目指して、奥地での広葉樹植林、環境教育、森林トラストなどを行っています。


この度、4月下旬から5月下旬までの1か月間、ふだんから当会の活動を応援してくださっている国際ロータリー第2680地区のGSEプログラムで、ドイツの南西部シュトゥットガルト近郊に、環境研修に行かせていただきました。ドイツは、自然保護が日本よりはるかに進んでおり、そのレベルの高さに、ただ驚くばかりでした。


ドイツでは、なだらかな丘が多く、森林を切り開くのが簡単で、30年戦争(1618~1648)や産業革命(19世紀)で、ほぼドイツ全土の森林を破壊し尽くしてしまいました。今ある多くの森は、人々が木を植えて造った森です。いくつかの人工林に行きましたが、日本のスギ・ヒノキ一辺倒の真っ暗な人工林とは違い、動物のエサになる実のなる広葉樹中心の、とても明るい森でした。例えばルートヴィヒスブルクにある森では、75%がオーク、ブナなどの広葉樹、25%が針葉樹でした。かつてはドイツでも、早く育つからという理由でトウヒやマツなどの針葉樹ばかりを植えていました。しかし20年~30年ほど前からは、針葉樹は嵐が来るとすぐに倒れてしまい、林業コストに見合わないこと、野生動物保全といった観点から、カシやブナを中心とした、自然の森に近い森造りを行うようになったとのことでした。特に1999年に大嵐が来た際、多くの針葉樹が倒れたことは人々の記憶に新しく、何人かの方から「針葉樹は根が浅いから、すぐに倒れてしまう。1種類だけの森は動物にも良くない」という話を伺いました。またドイツでは、森林生態系を考え、林業のための樹木の一斉伐採は行わないとのことでした。



ハウルブロンで見た人工林


日本では、造林の際、どんな樹種を植えても同額の補助金が出ますが、ドイツでは政策として豊かな森を復元しようとしており、EUや州政府は、人々が広葉樹を植えたときにのみ補助金を出すそうです。日本でも人工林が問題になってきてはいますが、実際には、土砂崩れを起こしたスギの人工林跡地に、またスギの苗木ばかりが植えられたり、広葉樹でも、見た目がきれいなサクラやモミジといったもののみが植えられることが少なくありません。豊かな森は動物がいて初めてできるものですが、動物が棲める森という観点はなかなか入らないのが実情です。

ドイツでは一般の人たちも、森造りの際には様々な樹種を植えなければならないことを分かっており、人々の意識の高さと、徹底した施策は素晴らしいと思いました。

(小山直美)