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■記事

2007/07/26


【好評連載】小山直美のドイツ報告
第2回 ドイツの野生動物 その1


早い時期に多くの森林を破壊してしまったドイツでは、クマなどのいくつかの大型野生動物も滅ぼしました。ですからドイツで「日本には野生のクマがいる」と話すと、「素晴らしい」と感嘆されました。

かつて野生動物を滅ぼし、森を破壊した文明は、全て滅びています。全ての産業の基盤となる豊かな森は、植物だけでできるのではなく、動物がいて初めてできるものです。野生動物は、森の中を歩き回り、土を掘り起こすことによって地面を耕し、木の枝を折って森に光が入るようにし、木の実や他の動物を食べてフンをし、豊かな土を作ります。木の実の中には、動物に食べられてフンとして排出されなければ発芽しないものもあります。森を保全するためには、植物だけではなく、動物も保全しなければなりません。

ドイツでは、早くに森や野生動物を滅ぼしてしまった反省の上に立って、月刊7月号で報告させていただいたとおり、商業用の人工林を造るときも、動物のことも考慮し、様々な種類の樹木を植えるなどの対策を行ってきました。

ドイツの野生動物の状況について、NABU(ドイツ自然保護連合)やBUND(ドイツ環境保護連合)、ヨーロッパ自然遺産財団ユーロネイチャーのスタッフの方などに話を伺いました。

◇オオカミが戻ってきた

(写真:オオカミ。150年ぶりにドイツの森に戻ってきた。)

ドイツに2000年頃、150年ぶりに、僅かな数ですが、野生のオオカミが戻ってきました。NABUでは、オオカミは森林生態系の中で大変重要だと、ハンターや牧場経営者などの人々がオオカミを受け入れるように、キャンペーンを行っています。ハンターは、オオカミがシカなど自分たちの獲物を捕ってしまうために、嫌っています。また人々の間には、オオカミは人を襲うものだという先入観が、根強くあります。しかし実際には、オオカミは臆病で、人間のところに滅多に姿を現さず、家畜を襲うことはあまりないのだそうです。

現在オオカミが生息しているザクセン州では、オオカミと共存していくために、オオカミが牧場の羊を食べてしまったときの被害補償制度を設け、シープドッグ(羊を守る犬)のトレーニングを行っているとのことでした。

(写真:延々と続く、京都のスギの人工林)

日本では、野生動物による農林業被害対策としては、柵設置などの被害防止対策、被害補償よりも、捕殺費用に多くの税金が割かれています。また、山奥まで動物が棲めないスギ一辺倒の人工林が広がっています。野生動物は農作物を食べてしまうなど被害を起こすことがある一方、豊かな森を造るのに欠かせない益獣でもあります。日本でも、捕殺だけではなく、被害補償制度や柵設置等の被害防止策、長期的に見たときに動物との棲み分けが可能になる、自然林に近い豊かな森の復元を早急に行っていくことが必要だと思いました。

(小山直美)