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■記事

2007/08/30


【好評連載】小山直美のドイツ報告
第3回 ドイツの野生動物 その2 外来種


ドイツでの外来種への対応について、NABU(ドイツ自然保護連合)やBUND(ドイツ環境保護連合)、ヨーロッパ自然遺産財団ユーロネイチャーのスタッフの方などに話を伺いました。

◇ドイツでの外来種への対応

日本では、今外来種が問題にされています。例えば、40年ほど前からペットとして北米などから輸入されてきたアライグマは、捨てられたり逃げ出したりして日本の森で野生化しました。生態系に悪影響を与える恐れがある、農業被害、生活被害を起こすという理由で、北海道、神奈川などでは、アライグマの根絶を目指して、毎年多くのアライグを捕殺しています。しかし国内外の外来種の根絶成功事例は、小さな島や、特殊な例を除いてありません。北海道では1996年以降、2億円以上の税金をかけて9000頭を越すアライグマを捕殺してきましたが、担当者の方によると「オリをかけたらいくらでもかかり、数が減っているとは言えない」そうです。

ドイツの森にも、北米から輸入されて野生化したアライグマなど、多くの外来種が棲んでいます。しかし、外来種はあまり問題にされていません。しばしば街中でハンターがアライグマを捕獲することがありますが、そういうときも殺さず、捕まえて森に放すか動物園に連れて行くそうです。NABUのスタッフの方は、「ドイツには昔から外国からたくさんの動植物が入ってきている。今更どうしようもできない」と話しておられました。既に野生化した外来種については、その存在を認めるというドイツの考え方は、現実的、合理的です。

(写真)クライルスハイムにある動物園「ワイルドパーク」で撮影したアライグマ。この動物園では、ドイツの森に棲む動物だけが飼育されている。アライグマも、ドイツに普通に棲んでいる動物として扱われていた。



「日本固有の生態系を守るために、外来種を駆除しなければならない」と言うと、まことしやかに聞こえますが、既に日本の生態系には、多くの外来種が組み込まれています。雑草の9割は外来種ですし、コメや野菜などの殆どの農作物、ダンゴムシやスズメといった身近な生きものも外来種です。既に日本の自然界では在来種と外来種が混在しており、一体何をもって「日本固有の生態系」と言うのかも、よく分からない状況です。在来魚のウグイがブルーギルの卵をエサとして利用していたり、在来希少種の昆虫クロサワヘリグロハナカミキリが、近年食性を転換して外来樹木のハリエンジュを食べるようになったことから個体数が回復し、今では比較的普通に見られるようになったりと、外来種が在来種に役立っていると言えるケースもあります。しばしば各地の池でブラックバスを駆除するとアメリカザリガニが増えるように、外来種が既に日本の生態系に組み込まれている場合には、その外来種を駆除することで、かえって生態系が混乱する恐れもあります。

現在、日本はアメリカに次ぐ世界第2位の野生動物輸入大国です。今後新たな外来種問題を起こさないように、まずは野生生物の海外からの輸入を厳しく規制することが必要です。その上で、既に日本で野生化してしまった外来種に対しては、根絶したり数を減らすのが現実的に不可能である以上、無用の殺生・税金の無駄遣いで終わってしまう根絶を目指した捕殺ではなく、外来種を農作地や希少種に近付けないようにするための柵の設置などの被害防止対策、被害補償等、現実的な方法で対応していくべきだと思います。

(小山直美)