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■記事

2007/09/27


【好評連載】小山直美のドイツ報告
第4回 ドイツの自然復元


私は、兵庫県の宝塚市で生まれ育ちました。私が子どもの頃は、家の周りに雑木林がたくさんあり、友達とよく遊んだものでした。しかし宅地開発のために、次第に雑木林は伐採され、近くの川はコンクリート張りにされていきました。子ども心にも、私が生まれるよりもっと昔から、その地に生えていた木々がいとも簡単に切り倒され、タヌキやキツネなどの動物が棲みかを追われていなくなってしまうのが辛くてたまりませんでした。  今回私が訪問したドイツの地域でも、宅地開発のための森林伐採が問題になっているとのことで、程度の差こそあれ、自然環境問題は日本でもヨーロッパ諸国でも同じように存在するのだと思いました。しかしドイツでは、一度人工的に変えてしまった自然を、もう一度もとに戻すことに力を入れています。私はドイツ滞在中、ルートヴィヒスブルクの行政職員の方に、自然復元事業を行っているいくつかの現場を見せていただきました。

◇水路

ドイツは、河川の自然を復元する取組で有名です。ドイツには、一度人工的にしてしまった河川を、もとの自然の状態に戻さなければならないという法律があるそうです。


(写真)コンクリート張りで一直線だったのを、自然の状態に復元した水路


上写真のネッカー川に注ぐ小さな水路は、かつてはコンクリートで固められて一直線だったのを、数年かけて、蛇行させて自然の状態に戻したところです。

ルートヴィヒスブルクの事業として、1995年に工事に着手したというこの水路は、今では岸に植物がたくさん生え、自然に近い川に戻っています。コンクリート張りだった20年前と比べ、魚の数が2倍に増えたとのことでした。私が訪問したときも、この水路をカモがゆうゆうと泳いでいくのを見ることができ、感動的でした。

◇採石場跡地

次に、一旦は植物が全て失われ地肌がむき出しになってしまった採石場跡地の山に木を植え、人々が集える森に復元しようとしている場所を見せていただきました。この場所の木は植えられたばかりで、それが森に回復するのは、まだまだ先です。

ここにはビオトープの池も造られていました。使われているのは土と石だけです。ビニールシートも使われていません。この池には、山の上から流れて来た水が溜まって、オタマジャクシがたくさん泳いでいました。職員さんは「夏になったら池の水は干上がってしまうが、それが自然だから仕方がない。オタマジャクシは、この池が夏には干上がるのを知っているので、早くカエルになろうとする」と話されました。日本のビオトープは人が管理することが多いので、自然に任せるというこの方法は、私には新鮮でした。


(写真)採石場跡地の、土と石だけで造ったビオトープの池


日本では、宅地開発はもちろん、必要性が疑問視される林道やダム建設、埋め立て、河川改修工事が今でも後を絶ちません。ほかの生物が棲めるような環境は、人間にとってもやさしいということに既に気付いて実践されているドイツの方法を参考にしていきたいものです。日本でも、既に人工的に変えてしまったところは、可能な限り元の自然の状態に戻すとともに、何よりもまず、これ以上、不必要な自然破壊をしないようにしていくことが大切です。

(小山直美)