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■記事

2007/10/31


【好評連載】小山直美のドイツ報告
第5回 ドイツ人の自然観


今回はドイツ人の自然観について、ご紹介させていただきます。

○ドイツ人の自然観

自然保護がたいへん進んでいるドイツでしたが、唯一私が理解できなかったのは、「自然は人間が管理すべきもの、管理できるもの」というドイツ人の自然観でした。例えばドイツでは、森に棲むシカが死なないように冬の間、餌付けし、冬が終わったら数が増えすぎないように狩猟をして頭数管理を行います。後で殺すくらいなら、最初から餌付けしなかったら良いのにと思いました。

自然界では、野生動物は他の生物との相互作用により、著しく増減を繰り返します(グラフ参照)。とても人間が管理できるものではなく、それができるのは自然だけです。人間が手を入れると、逆に生態系のバランスを崩してしまうことになります。

BUND(ドイツ環境保護連合)やNABU(ドイツ自然保護連合)のスタッフの方に聞くと、実際にはドイツでも、狩猟による頭数管理には賛否両論あるとのことでした。「ハンターは、動物の数が増えているから、人間が管理しなければならないと言う。一方で、狩猟は動物の頭数管理には関係ないという意見もある。結論の出ない問題だ」「ハンターが動物を餌付けするのは、動物を撃ちたいからだ。自然の森なら、人間が統制しなくても、自然に動物の数はコントロールされるはずだ」といった意見を伺いました。しかし、ドイツでは総じて「自然は人間が管理すべきもの」と思っている人が多いようでした。

最近、日本も「野生動物保護管理」といって、狩猟や有害獣駆除により、欧米型の「野生動物を一定の数に維持する」という方法を取り入れるようになってきています。いくつかの自治体が保護管理計画を策定していますが、まず、野山を動き回る野生動物が何頭いるのかを正確に把握することができないし、もともと自然界では著しく個体数の増減を繰り返す動物の数を一定に保つことは不可能です。昨年はツキノワグマの保護管理計画を策定していた自治体で、駆除の上限数を決めているにも関わらず、それを上回る数を殺してしまったりと、上手く機能していないのが現状です。

○日本人の自然観

日本では、江戸時代には、たった1種類の野生動物も滅ぼさなかったと言われています。かつての日本人は、動物にも植物にも、自然界の生きものには全て神様が宿っていると考え、自然への畏敬の念を持っていました。これは、「自然を人間が管理する」という欧米の人間至上主義の考えとは異なるものでした。日本ではかつては、自然に対する謙虚な自然観が、行き過ぎた自然の乱開発を防ぎ、野生動物との棲み分けを可能にしてきました。工業先進国と言われる日本が、僅かながらも自然の森を残し、クマのような大型野生動物を残すことができたのは、世界に誇れることです。人間が地球を破壊できるほどの力を持ってしまった現在、真に他の生き物との共存を可能にするのは、人間による自然のコントロールではなく、人間が自分たちの欲望をコントロールし、自然に対して謙虚になることだと思います。

日本は、全てを欧米の真似をするのではなく、欧米の優れた所は取り入れながらも、日本の素晴らしい所も大切にし、日本に合った方法での自然保護をすすめていくべきだと思います。



【グラフ】動物の個体数の変動 (出典 啓林館理科教科書)



【写真】ドイツ「ワイルドパーク」のシカ

■ワイルドパーク:

クライルスハイムという街にある動物園。広い森の中をフェンスで区切り、ドイツの森に棲んでいる、またはかつて棲んでいた動物だけが飼育されています。 気候風土が合わず、狭いオリの中で、動物たちがストレスのために行ったり来たりしている日本の動物園と違い、敷地が広く、自然の草や木も植わっており、動物たちは、より自然に近い状態で生活することができます。子どもたちにとっても、のびのびとした動物の姿を見ることができ、環境教育施設としても優れています。

(小山直美)